群雄割拠の戦国時代、土佐国(現在の高知県)の小領主から豪族を切り従えて土佐を併合、阿讃予に侵攻して四国を席巻した戦国大名長宗我部元親。
今回は元親の周囲の人物が光る小説5冊を紹介。
黒南風のうた 長宗我部元親と蜷川道標 三浦伸昭 文芸社
アニメ「一休さん」に登場する蜷川新右衛門の子孫、蜷川親長(道標)が主人公の小説。
代々足利幕府の政所代を務めていた親長が、元親に招かれて土佐に下向、最後は徳川幕府お伽衆として七十八歳で亡くなるまでが描かれる。
歴史小説ぽい硬さが無い、軽妙な文章が印象的。
元親に謀叛を企てた武将
朝の霧 山本一力 文春文庫
元親への謀叛の企てが露見し、自害させられた波川玄蕃頭清宗が主人公の作品。
智勇兼備の家臣として長宗我部国親に信頼され、娘の養甫を娶った玄蕃が、国親の息子元親の代になって無理難題を次々と吹っ掛けられていく。
実直な玄蕃に対して元親は嫉妬深い悪役として描かれる。
同じ結果の史実でもそこへ向かう経過は違う、歴史は勝者が作ると言うが後の長宗我部家を思うと、その言葉の虚しさを感じる。
偉大な父を持つ二人の息子
翻弄 盛親と秀忠 上田秀人 中公文庫
長宗我部盛親と徳川秀忠の視点で交互に描いた作品。
関ヶ原の戦いから大坂の陣、立場は反対でも、同じく偉大な父を持ち苦悩する2人に着目した点は斬新に感じる。
奸臣久武親直から見た元親
南海の翼 長宗我部元親正伝 天野純希 集英社文庫
物語は関ヶ原の戦いから始まり、敗れて京で蟄居する盛親の元に現れた旧臣久武親直が、元親について語る形式で進んでいく。
元親はもちろん親直の心情描写が真に迫っていて引き込まれる小説。
最後まで生き抜いた長宗我部康豊
おれは権現 司馬遼太郎 講談社文庫
戦国時代を舞台とする7編の短編集。
収録されている「信九郎物語」は元親の末子長宗我部康豊が主人公の作品。
他の長宗我部の血筋を持った男子は途絶える中、死を選ばず生き抜いた康豊の生き様が面白い。
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